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海外で就職しようと考えている方の中で、「そもそも現地採用って何だろう?」と思っておられる方はいませんか?
ここ数年でよく「グローバル就職」や「現地採用」「現地就職」といった単語を聞きますが、海外就職を目指していない一般の方ですと、その内容を知っている方は多くありません。
日本に戻ってきて再就職しようとした際に「海外で現地採用として働いていました。」と自己紹介しても、面接官ですら「現地採用とはどんなものですか?」と訊ねてくるほどです。
しかし、海外での就職に関して、求職者側も十分に現地採用ともう一つの就業形態である本社採用の違いを、他人に説明できるほど理解していると言えるでしょうか。
今回は、海外就職希望者なら絶対に押さえておくべき現地採用と本社採用の違いを紹介したいと思います。
現地採用って何?本社採用との違いは何か
待遇面での違いと役割の違い
今ぼんやりと、海外で働きたいけれども、何が近道なのだろうかと考えている方や、そもそも現地採用の意味がよくわからないという方のためにわかりやすく現地採用と本社採用の違いを説明致します。
日本の企業だけでなく、海外に展開している企業なら、どこでもその現地にある子会社を「現地法人」として設立します。例えばXX社のフィリピン現地法人ですと、XX Philippines Corporation Limited.などと表記されます。
もし今、あなたが行きたい日系企業があればサイトにアクセスしてみてください。海外拠点や現地法人、現地子会社という名前で、どんな国に展開しているのかが一目でわかるでしょう。
これらで働いている社員は9割以上が現地人スタッフで、残りの1割を日本の本社から派遣された駐在員と、現地採用者と呼ばれる日本人が占めています。
つまり、日本人の社員には2種類があって、駐在員は本社採用を経て、本社から派遣される人たちのことを指します。一方で現地採用者とは、日本の本社ではなく、現地法人と雇用契約を結んで働く日本人のことをいいます。
同じ日本人なのだから、全て同じだろうと思われがちですが、決定的な差があります。それが待遇面と、求められる職域です。
基本的に現地採用者は、日本や海外での就労経験があり、その国で働いてくれる方を募集しています。駐在員は本人があまり乗り気でなくとも、半ば無理やり派遣されることも少なくありませんが、現地採用者の大多数は自ら望んで、その国のその会社で働こうとしています。
つまり、会社の命令で海外に行ってもらっている駐在員には、なるべく不自由をさせまいと、日本本社が住居費や子供の教育費まで出してくれますし、日本での雇用保険も社会保険も負担してくれます。一時帰国の費用も負担してくれるところもあります。
そして多くの企業は日本の給与と現地の給与の2本立てであり、豪遊をしなければかなりの貯金ができるとも言われています。しかしこれは大企業に限った話です。
ですが、現地採用の方の場合は、自ら望んで来るわけですので、ほとんどそういった諸手当がつきません。
また、雇用関係も現地法人と契約を結んでいるので、日本の健康保険も離脱しなければなりません。自分の任意で年金を払うことはできますが、将来日本に戻る気がない方はよく考えなければなりません。
期待される役割の違い
そして、仕事においても役割が違ってきます。だいたいの駐在員は日本での肩書きから2階級特進して、ジェネラルマネージャーやCEOとなりますが、ほとんどの現地採用者は20代半ばから30代前半頃の転職者ですとアシスタントマネージャーから始まり、マネージャーになるのもそう簡単ではありません。
そもそも求められている仕事が違います。では、現地採用者の主な職域は何でしょうか。
- 駐在員が入れ替わっても、日本本社とのやりとりに困らないような橋渡しをする(業務の引き継ぎの手伝いなど)
- 現地人スタッフと駐在員の橋渡し的存在として、お互いの良い点を客観視する(会議での議事録まとめなど)
- 日本語の話せるスタッフや、日本語を学んでいるスタッフのコーチングをする
- 日本的ビジネスの仕方を、現地人スタッフに教える(〜さんという敬称の使い方や、電話応対など)
これらは社内外のコミュニケーションにおいて、とても重要なものです。そして現地採用者はだいたい語学力が高い方が多いので、翻訳などの事務的作業や通訳もお願いされることがあります。これらが主な駐在員と現地採用者の違いです。
現地採用は本社採用に切り替われるのか
現地採用の方で、特に抜きん出て営業成績の良い方などは、稀に本社採用に切り替わることがあります。しかしこれは誰でもなれるわけではなく、原則的には現地法人で雇用契約を結んだものは、現地法人の社員として扱われますので、ある意味反則的なものだとも言えます。
例えば3月にだいたいの企業は契約更新のタイミングを迎えますが、そこで「ぜひとも君を本社採用にしたい」という話が出れば、現地法人での雇用関係を一旦終了させ、本社に入社の手続きを経て駐在員という形で出向という形式をとります。
同じ日本人の社員でも、どこと雇用関係を結んでいるかが異なるので、こうした手続きが必要となるわけです。もし将来的に駐在員を目指しているのなら、相当の努力が必要ですし、成れないことの方が多いということも肝に銘じておきましょう。
さいごに
上記の話を聞くと、「待遇が悪いなあ」とか、「差別されてるのかな」と思われる方もおられるかもしれませんが、そもそも駐在員というシステムは、企業が優秀な人材を、将来の幹部候補として経験を積ませるために、海外に送り出すという側面もあるので、本人の意思より会社の利益のために人事異動が決定します。
一方で、現地採用者の最大のメリットは「自分で働きたい期間を設定できる」という点です。駐在員の中には、海外を転々としてきて日本を離れて10年以上経つという方も珍しくありません。なかなか帰りたくとも帰れないという現実もありますし、子供の学校の問題などもあるため単身赴任を余儀なくされている方もおられます。
しかし、現地採用ですと大抵の場合は1年ごとの契約更新ですので、他の企業に転職したくなったり日本に戻りたいと思えば、自分で退社することも可能です。他の国で転職することも自由ですし、本社採用の方に比べて私生活の制限もあまりありません。(国によっては、駐在員の運転が危険として本社から禁止されているケースもあります)
海外で長く働きたい方、色々な国で経験を積みたいという方にとっては、現地採用という選択肢は決して悪くないでしょう。